私の人生においてこの問いは非常に大きな位置を占めています。
今の社会で「働く」ということは、幸福につながっているのでしょうか?
人類全体は目覚ましい成長を遂げてきました。経済が大きく成長し、物質的な豊かさを誰もが広く享受できる時代が訪れています。
その一方で、働く人たちの精神世界はどうでしょうか。充実して働く人は少数であるという統計データが様々な調査から示されています。この事実は何を示しているのでしょうか。
会社は人間中心に存在すべきであると私は固く信じています。しかし、昨今の会社経営では、利益や成長を追求することに重点が置かれています。大切なことですが、あまりに行き過ぎると、人間を機械的に捉えていく傾向が強まるように思います。そういった環境が続けば、一人ひとりの本来持つ絶大な可能性がその行き場をなくしていきます。さらに、皮肉なことですが、経営者自らもその環境に自らを追いやり、本来の自分の声に耳を傾けづらくしていきます。この現象の一側面が、充実して働く人が少数であるという数値に現れているのではないかと私は考えています。
私の経営者としての歩みに目を向けると、上述したことをそのまま再現している時期がありました。平々凡々な経営者だと本当に痛感します。RELATIONSという会社での様々な経験のおかげで大切なことに気づかされ、本来の自分を取り戻せてきています。RELATIONSに、本当にすごく感謝しています。
私は、RELATIONSを27歳のときに起業しました。創業期のメンバーと深い絆を結び、お互いを信頼し、がむしゃらに働きました。ダイナミックかつ自律的な動きが各所で生まれ、同時に、それぞれが深く共感し、組織が一つになっていくという体験をしました。そうすると、集団としての強いエネルギーが生まれ、会社が大きく成長していきました。
しかし、会社が大きくなるにつれて、大切にしたい価値観がコアなメンバーでぶつかり合うようになりました。私自身、関係性を大切にするあまりに、関係を壊すような判断に恐れを抱くようになっていきました。無意識だったのですが、徐々に自分の素直な声に蓋をするようになっていました。そうすればするほど、会社の混乱が強化されるような不思議なパターンに陥っていきました。この時期の苦しさはもう味わいたいとは思えないほどの体験として刻まれています。
色々な人の支えのおかげで、逃げずに向き合い続け、コアなメンバー同士で深い対話を繰り返しました。結果として、それぞれが決断をし、今のRELATIONSへと大きく変容していくきっかけとなりました。そして、まだまだ道半ばですが、創業して以来一番素直な自分で関わることができています。
私自身の経験を通じて冒頭の問いを探求していくと、素直な関係へと帰着しました。もう少し噛み砕くと、自己、他者、会社の3つレイヤーに素直に心を開いていくことです。
まずは、自己の根源に素直につながる。自分が何者かを探求し続けること。次に、他者と率直に対話し、他者の根源にも触れ、徐々に共通の根源を育んでいく。そして、会社のルーツにも触れ、耳を傾けることで、会社の根源とも徐々に深くつながっていくようになります。
自己、他者、会社の3つに素直につながっていくことで、深層での理解が生まれ、自ずと会社が次にどこに向かいたいかが見えてきます。そこから生まれ出てくる衝動は、あらゆる根源ともつながり、それが自然な行為となり、外側にじわじわと届いていきます。その営みが連綿と続くことで共創や共進化が生まれ、会社全体の生命力が高まっていきます。
「素直な関係」というのは、そのままRELATIONSという社名にも還元されます。自己、他者、会社と素直な関係をつくり、そこに宿る根源に触れていく。時間の流れと共に、絶えずそれを探求し続けていく。そうした営みが少しずつ深く本質的なものへとつながり、充実して働くことにつながっていきます。
そして、この実践を続けていくことが、社会や地球とも素直な関係をつくり、共生へとつながると信じています。RELATIONSを通じてその実践を繰り返し、社会にその知恵を還元していきます。